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小玉ユキ『光の海』


光の海 (フラワーコミックス)光の海 (フラワーコミックス)
(2007/01/26)
小玉 ユキ

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コミックナタリー:アニメ「坂道のアポロン」は渡辺信一郎×菅野よう子で制作

ということで、『カウボーイビバップ』の監督&音楽コンビが復活です。
これはぜひみなければなのですが、愛媛ってノイタミナやってましたっけ?
それはともかく、原作をまったくしらなかったので、まずは1巻を購入。
ついでに、作者のこともしりたくなったので、過去の作品もさがしてみることに。

そのときに、たまたまあったのが本作でした。
どうもこれが作者の初単行本らしいですね。
「人魚シリーズ」と名づけられた、この短篇集の世界では、
海の生態系のなかに、ごくあたりまえに人魚が存在しています。
言語を解し、人間とコミュニケーションもとれます。

人魚がいるという、ただひとつのおおきなフィクションをもりこんだうえで、
5つの短編で展開されるのは、むねがいたくなるほどの感情のゆれうごき。
男性を主人公にした表題作はとくに、そのつらさがせまってきました。
以下、それぞれてみじかに。

「光の海」

16歳で寺にはいり修行してきた、きまじめな若僧侶、秀胤。
しかし寺のあとつぎは、インド旅行からひょいとかえってきた住職の放蕩息子、光胤。
あかるくて自由奔放、檀家からの人気もあり、趣味はサーフィン。
そしてカノジョもいる。人魚の。

これが最初によんだはなしだったので、この世界観にとまどいはしましたが、
ものがたりの中心は、光胤に対する秀胤のきもちのほう。

(p24)
何年もかかって積みあげたもんを 全部お前がかっさらったくせに
なんの努力もなしにな
美しい読経の声も 見た目も 器用さも 住職が求めとった「血」も持っとる奴が
嫉妬やって? ひどい冗談や
ばかにするのもたいがいにせえ お前さえいなければ
お前さえいなければ― こんなにみじめな思いせんで済んだのに―


モーツァルトに対するサリエリ、というか。
ほれたはれたの単純な展開でない、この最初のエピソードで、
グイッと興味がひきつけられました。さあつぎのはなしを。

「波の上の月」

学生時代にルームメイトだった、さきと京子。
成長したら岸辺をはなれ外海へでていく、オスの人魚ふたり。
ひとがひとをすきになることのくるおしさ。
じぶんのきもちにケリをつけるつらさ。

でもじつは、印象にのこったのは、地元の漁師さんの説明。

(p51)
「昔からこの島は人魚が名物ばってん
 20年前にブームがきたあと がくーっとすたれてしもてね
 ブームのころにできた人魚パークやら人魚博物館はさびれきってもぬけの殻ですよ」


ああ、そういうところ、日本のあちこちにあるでしょうね。
そのてのハコモノはきっと、ふるさと創生事業でたてたにちがいありますまい。

「川面のファミリア」

主人公のおんなのこが『リコーダーとランドセル』のあつみにみえなくもないような。
(いやまて、あっちは高校生だ)
自宅で小説をかくおとうさんは『よつばと!』のとーちゃんっぽいかんじ。

むすめと、バツイチ父親と、父親がすきになった人魚(子もち)の三角関係。
そうだよなあ、結婚って人間だけのルールだよなあ。

「さよならスパンコール」

5作品のなかではいちばんスタンダードというか、まっすぐな少女マンガしてる感じ。
かっこいい先輩にあこがれる女子高生・菜月。
その先輩は、菜月にひきあわされた人魚にひとめぼれ。

(p133)
先輩は人魚を見ないけど
全神経が人魚に向かってるのがわかる


うわあ、こういうのはみててすごくつらいけど、
でも、これが少女マンガをみる醍醐味みたいなものでもあるような。
タイトルといい、この1作だけでひとつ楽曲がつくれそう。

「水の国の住人」

としおいた海女の、わかかりし日の回想記。
海をみるのがつらくなってしまった、その理由。

かのじょのいる土地では、海で漁師や海女が事故でいのちをおとすと、
それは人魚が、海の死神がしずめてしまったのだ、といいつたえられてきました。
現在を舞台にしたそれまでの4作が、
あるていど人間と人魚が共生できていたことをかんがえると、
そうなるまでには、かなりの時間を要したのだろうと推測されます。

不意のアクシデントで、あやうくおぼれそうになったかのじょをたすけたのは、
オスのわかい人魚でした(半分ちかくはかれのせいでもありますが)。
かのじょをもとの海につれてかえった人魚。
しかしかれをねらって、海の死神をいみきらう、かのじょの父親のモリが―。

(p183)
それから俺は何十年もの間 海を眺めては 人魚の影を探してばかりいたんだ
あいつでなくてもいい
一頭でもこの海に戻ってきてくれりゃ 俺は救われる―


5作品をよみおわると、ほんとうに人魚がいるようなきにもなってきます。
日本各地、それぞれの地に、それぞれの人魚との交流があって。
そういう、世界のひろがりをみせてくれる短篇集でした。
さて、これから『坂道のアポロン』をよむとしましょうか。

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