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朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠―明かされなかった福島原発事故の真実』


プロメテウスの罠: 明かされなかった福島原発事故の真実プロメテウスの罠: 明かされなかった福島原発事故の真実
(2012/02/28)
朝日新聞特別報道部

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付箋をはりながらよみました。
ポイントは、手にはいるはずの情報がえられなかった、という箇所。
被災地の住民に対しては。

(p22)
馬場(有・浪江町町長。引用者注)によると、
県の担当課長は涙を流しながら「すみませんでした」と言い、
SPEEDIの結果を伝えなかったことを謝ったという。


(p32)
6月初めのある日曜日、男(作業服背中に「文部科学省」、引用者注)がポツリと言った。
「今だから言うけど、ここは初め100マイクロシーベルトを越していたんだ。
 その時は言えなかった。すまなかった」


(p34)
「ここって高かったんですね」と30代ぐらいの警察官に聞いてみた。
「そうなんですよ、高いですよ。でも政府から止められていて言えなかったんです」


(p53)
「どうなんだって言っても答えない。線量の数値も教えない。
 どうなんだって言ったらたばこ吸ってんだよ。
 ふざけんなこのやろうって思って追及したんだよ。
 文部科学省の職員なのかって聞いたら違うと。なんでこんな車さ」


(p62)
文科省は16日にその数値を発表したが、地区名は伏せたまま。
浪江町に知らせることもなかった。
町は危険を認識せず、一帯に残る住民に伝えることもなかった。
なにより官房長官は「直ちに人体に影響を与える数値ではない」と会見で述べていた。


ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の木村真三氏に対しては、
勤務していた研究所から一斉メールで、
放射線等の測定などできることもいくつかあるでしょうが、
 本省ならびに研究所の指示に従ってください
」という文面が。

(p44)
研究所に放射能の専門家は自分しかいない。
これは自分に向けて出されたメールだ。木村は思った。
自分の現地入りを止めるつもりだ、と理解した。


原子力災害対策本部の総責任者、菅直人(元)首相は、
原子力安全・保安院の緊急時対策センター(ERC)が、
SPEEDIをつかって独自に避難計画案をつくっていたことを、
2011年10月31日、朝日新聞連載「プロメテウスの罠」をよんで、はじめてしりました。

(p70)
そんな情報は全く届いていなかった。
驚いたあと、怒りがわいてきた。
目の前に原子力安全・保安院のトップがいた。
ERCの動きを、なぜ彼は自分に伝えなかったのか。
いや、自分たちの動きも彼はERCに伝えていない。
これはおかしいじゃないか。


原発事故2〜3日内の放射線値データを、
原発から5kmにある現地対策本部を拠点にして、採取してはいたものの。

(p75)
現地本部は15日に福島県庁まで撤退する。
その際、データを入れたファイルを現地に置き忘れていた。
回収したのは5月28日になってから。
事故直後の放射線値のほとんどは、6月3日まで表には出なかった。


放出された放射性物質の海洋への影響についての論文を『ネイチャー』に出そうとした、
気象庁気象研究所の青山道夫氏に対しては、研究所の加納裕二所長が、

(p97)
加納「チェルノブイリ事故との比較を削れないものか」
青山「削れば、残るのは核実験の影響による太平洋の汚染との比較です。
『100万倍ひどい』なんて書かれることになりますよ」
しかし加納は譲らない。
「書き直さないなら、『気象庁気象研究所・青山道夫』の名前でこの論文を出すのは
 許可できない」


南相馬市の高橋慶さんは、じぶんの内部被曝をしらべてもらおうと、
各地のホールボディーカウンター装置をもつ機関に電話するも、すべて拒否。
市民の検査をことわる理由、たとえば茨城県保健予防課の説明は。

(p170)
一、福島県が公表した県民6600人の被曝量が極めて低かった。
一、福島県が内部被曝の検査対象とした地域に比べ、茨城県の空間放射線量は極めて低い。
一、以上をもとに放射線被曝の専門家に聞いた結果、
「内部被曝検査などの健康調査は必要ない」という判断となった―


福島県に対して、日本原子力研究開発機構・放射線医学総合研究所がともに、
食事から放射能をとりこむことをみとめて計算すべきと提案しましたが。

(p181)
しかし福島県は提案を断った。地域医療課副課長の川島博文は言う。
「食品に対する不信感、不安感をあおる心配があるからです。
 内部被曝が分かった人に聞いても、食品からとったとは誰も言わない」


3月15日朝、官邸中枢にSPEEDIの存在についてつたえていれば、
住民を避難させて被曝をさけられたのでは―という疑問に対して。

(p210)
安全委員長の班目春樹は言う。
「原発のプラントが今後どうなるかを予測できる人間は、私しかいなかった。
 その私にSPEEDIのことも全部やれっていうんですか。
 超スーパーマンならできるかもしれませんけど、
 役割分担として菅首相にアドバイスするのは保安院です」
保安院長の寺坂信昭は言う。
「保安院がSPEEDIの話をしちゃあいけないことはないが、
 SPEEDIは文部科学省の所管です」


こうした詳細をよめばよむほど、いかりよりもタメイキがさきにでてきます。
こちらが激昂してみても、のれんにうでおし、ぬかにくぎ、というか。

必要な情報が、必要としているひとたちのもとにとどかない、というこの状況は、
みをかくした黒幕が指令をだしてシャットアウトしている、というよりも、
各セクションの担当者が、どうすればいいのかまったく検討がつかず、
とりあえず前例踏襲、杓子定規、規定どおりにすればいい、としたのではないかと。
「上がいうなといっているのだから」という理由で、じぶんの行為を正当化して。

国のオエライさんにせよ、セクションの末端の人間にせよ、
情報をせきとめた当の本人にあっては、どういうおもいだったのでしょうか。
「ホントはいわなきゃいけないができない、もうしわけない」とあやまりたかったのか、
「なんでオレに文句をいうんだよ、勘弁してくれよ」とウンザリしていたのか、
「じぶんのしごとはここまでなのだから、しょうがない」と諦観していたのか。

情報がとどかない理由について、本書ではこうしるしています。

(p76)
SPEEDIの存在を認識したあとも、官邸は予測図を公開しなかった。
それに関連し、首相補佐官の細野豪志は、5月2日の記者会見で
「国民がパニックになることを懸念した」と説明した。
住民に情報が届きにくかった背景には、おそらくそんな国の思想がある。
だが実際には政府自身がパニックに近いような混乱ぶりだった。


SPEEDIにかぎらず、おそらく全般についてそうなのだろうとおもいます。
「みんなおちつけ」とさけんでいるおまえがまずおちつけ、という。
パニクっている政府・省庁にたよりきりにならずに、
「もうこっちでさっさとやっちゃえ」とうごいている例も、おおくあります。
NHKと木村真三氏らの「ネットワークでつくる放射能汚染地図」もそのひとつ。

だって、ねえ。原子力政策のトップたちが、このていたらくでは。
3月12日、菅首相らが福島第一原発に視察にきた際には。

(p238)
菅は運転席の後ろにある右窓側の席に座った。
隣に武藤
(栄・東電副社長。引用者注)が座ると、菅は激しく詰めよった。
「何でベントができないんだ!」「早くやれ!」「いいから早くやれ!」
菅の4つ後ろの席にいた首相補佐官の寺田学が驚くほどの声だった。
武藤が何か答えた。
寺田は「ごにょごにょごにょごにょ、としか聞こえませんでした」。
菅も、そのときの武藤の返答を「ごにょごにょ、だった」と言う。


その日の午後、1号機が爆発した映像がテレビでながれたときには。

(p246)
「総理、これを見てください」
執務室には官房副長官の福山哲郎と原子力安全委員長の班目春樹もいた。
寺田は班目が「あちゃあ」という顔をしたのが印象に残っている。

しかし班目は菅にガツンとやられなかった。菅は言う。
「予測できなかった人にそれ以上言っても仕方ないだろ」


政府にせよ、原子力安全・保安院や東京電力にせよ、
意図的に、国民をいためつけてやろうとか、悪の大ボスとして君臨しているとか、
そういう印象は、本書をよんでさらに、うすくなっていきました。
(だからといって、国民のためにつくす善人とは到底おもえませんが)

むかしからこうしてきたのだから、おなじようにやっていく。
計画どおりにことをはこぶために、ジャマなものはキチンキチンと排除する。
命令や規定以外のことをすることは念頭になく、ただただ職務をまっとうするのみ。
善悪うんぬんというよりも、そういうひとたちの集合体なのではないかなあと感じます。

命令以外のことをして、失敗したり、上司ににらまれたりしたら、責任問題になる。
会社として批判されるのはしかたないかもしれないが、個人として責任をとりたくない。
むしろ命令以外のことはなにもしないほうが、目をつけられることもない。
明確な悪意をもっての不作為ではなく、無責任でありたいきもちからの不作為。

そういう意味では、朝日新聞をふくめたマスコミについても、
本書のようにするどくきりこんで取材してほしいものですね。
いわゆる「大本営発表」に対する検証・批判が、どれだけおこなわれたのか。
当時の記事がまちがっていたとしたら、その自己検証はなされているのか。

新聞連載はまだつづいているようなので、
ちかいうちにぜひ、マスコミの章をよろしくおねがいします。

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