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山川元『東京原発』


東京原発 (竹書房文庫)東京原発 (竹書房文庫)
(2004/01)
山川 元

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先日ツイッターで実況した、
ETV特集「シリーズ 原発事故への道程 前編 置き去りにされた慎重論」を、
はじめてTogetterにまとめたところ、
きょう9月22日の時点で、1000viewを超えました。

見ていただいたみなさま、ありがとうございます。
それだけこの番組が、おおくのひとたちに関心をもたれていたということです。

番組の中盤、日本ではじめて原子力予算がとおった1954年についてかたられました。
超党派で予算案をつくった政治家が、齋藤憲三、前田正男、中曽根康弘。
そのあたりのことについて、本書ではこう書かれています。

(p124〜125)
「オイルショックは1973年ですが、日本の原子力予算案が初めて国会を通過したのは、
 1954年です」
津田は驚いて笹岡を見た。
オイルショックの20年も前から原子力政策が始まっていたとは、
津田も知らなかったのだ。
「それは本当ですか?」
「はい」
「そんなに早くからやってたんだ。日本も大したもんだ」
やけに感心している大野を見て、津田は思わず立ち上がった。
「何を言ってるんだ! 原爆を落とされてから、まだ10年も経ってないじゃないか!」

石油にかわるエネルギーとしての原子力。
原子力の平和利用。
そうした風潮がおこるもっとまえに、すでに原子力政策ははじまっていたのです。
1954年。第五福竜丸事件の年。『ゴジラ』第1作公開の年。

紹介がおくれましたが、本書『東京原発』は、
2004年に公開された同名映画の、監督じしんによるノベライズ版です。
東京都知事・天馬役に役所広司。副知事・津田役に段田安則。
そのほか都の重役に、岸部一徳、吉田日出子、田山涼成、菅原大吉、平田満。
都庁のせまい会議室を舞台に、
都知事による「東京に原発を誘致する!」プランについて議論するというはなしです。

原発やエネルギー問題について延々はなしあう展開。
大予算のビッグプロジェクトというおもむきでは、まったくありませんが、
芸達者な役者たちの丁々発止の演技がたのしく、ひきこまれてしまいます。
財務局長役の岸部一徳のトボケっぷりは、これがあの官房長かとおもうほどで。
あ、あれは警視庁だったっけ。

さて、都知事が東京原発誘致をブチあげた理由ですが、
親切にフリップボードに書いてくれました。シールをはがして説明。

【その1 都の財政再建】
電源三法交付金、地方交付税、製造業者への税制優遇などで、財政赤字を改善。
【その2 自然環境の保護】
地方の農地や山林・海岸をまもり、第一次産業を保護。
かわりに、東京というコンクリートジャングルにコンクリートの建物をひとつふやす。
【その3 莫大な経済効果】
土地・漁業権の買取費用や送電コストをうかせ、電気料金全体をひきさげ。
ういた電気代を消費にまわさせ、景気回復。
【その4 エネルギーの有効利用】
温排水を都内に循環させ、熱エネルギーを供給。東京都を巨大な冷暖房都市にする。

役所広司の堂々たるかたりくちもあって、
「おお、なるほどすばらしい」と、つい納得させられてしまうプランです。

このプランに反対する一同に対して、
都知事が電話口によびだした、原子力安全委員会の松岡(益岡徹)による、
原発がいかに安全なものか、の弁論。

(p100)
「あーあー、ん、ん、えー、では原発の安全性について、一言申し上げます」
一同は真剣な顔で耳をそばだて、次の言葉を待った……。
「原発は、絶対安全です!」
一同はその言葉は無視し、次に期待した……。
「大事故に繋がる危険性は……。確率にしますと……」
来た! 一同はスピーカーを覗き込むように身を乗り出して固唾を呑んだ……。
「分子を1とするその分母は天文学的数字になります。
 すなわち危険性は限りなくゼロだということになります。以上。
 では私はこれで失礼いたします……」
プツン……ツー、ツー……電話は切れた。
その一方的でやけに不自然な早口の電話に一同は言葉を失い、
身を乗り出した姿勢のまま暫し動けなくなった。


映画なので、ある程度(イヤ、けっこう)カリカチュアライズされていますが、
いま、実際の原子力安全委員会を見ていると、じつはいい線いってるのかも?
さすがに、昼日中に外出先で国家機密を電話でベラベラ大声でしゃべり、
「これ、ホントに内緒ですよ」とのたまうようなアホはいない…と信じたい…けど…。

その松岡のはなしに対する、東大物理学の榎本教授(綾田俊樹)のコメント。

(p101)
「彼らはいつも我々が知りたい一番肝心なところは隠し、ごまかし、平気で嘘を言い、
 夢のような話だけは、声を大にして宣伝します。
 まるでそれが、彼らの一番大事な仕事のように……」

そのまんまですね。
あまりにそのまんますぎて、一連のシーンはギャグのはずなのに、わらえなくなります。
もっとおどろいたのは、7年後の計画停電、脱原発デモを予言?していたこと。

(p48〜49)
「いえ、世論やマスコミがどういう反応をするかが、気がかりで……」
「気がかりも何も、数万人規模の反対デモが起こるに決まってるじゃない!
 あっと言う間に都庁がデモ隊に囲まれるわよ!」

「そいつらにメガホン使って言ってやれ、お前らは電気がいらないのか! ってな」

「まあ、一度停電にでもなれば電気の有り難さを実感するんでしょうけどね。
 最近は停電もないですしねえ……」
「停電にするか、とりあえず23区を1時間くらい。どうなるか面白そうだな」
天馬は自分の思いつきに笑っている。


フィクションだとおもっていたことが、まさかホントになるなんて…。
しかも政府だか電力会社だかの思惑まで、すでに見すかされている…?

物語はこのあと、榎本教授による、都知事プランへの反駁になります。
原発の耐震性。「原発は電力の3割」説。再処理。プルサーマル。
放射線被曝。東海村臨界事故。チェルノブイリ事故…。
ひとつひとつ書きだすとキリがないので、ぜひご一読ないしは鑑賞を。

文庫オビの推薦文は、いとうせいこうさん。
9.11新宿デモ、アルタ前でのポエトリー・リーディングも記憶にあたらしいところ。

社会派作品にして静かなるドタバタ。
プロパガンダにしてエンターテインメント。
誠実な笑いが時に最も強烈な毒になる。


すでにこの時点で、問題意識をもっておられたのですね。

「反原発プロパガンダ映画」とみられるむきもあるでしょうが、
ならば「原発推進プロパガンダ映画」をいま、つくってみてはどうでしょうか。
正々堂々と、原発の必要性を世に問うほうが、いっそすがすがしいのでは?
でもって、どこかの映画館で賛成反対両方の映画でイベントを…どうでしょう。

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