スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

山本夏彦『生きている人と死んだ人』


生きている人と死んだ人 (文春文庫)生きている人と死んだ人 (文春文庫)
(1991/11)
山本 夏彦

商品詳細を見る

このブログやmixiの日記を書いていておもうのは、
「どうして自分はこんなにダラダラながながと書いてしまうのか」ということ。
ツイッターでさえ、つい欲ばって140字ギリギリまでつかってしまいがちで。
もっとみじかく、端的に、本質をついたことばをいえないものかしら。

それもあって、ながく読んでいるのが、山本夏彦翁の著作群です。
日本でもっともすぐれたコラムニスト。
ながい文章を限界まで圧縮し、すこしのことばでだいじなことをスパッといいあてる。
これくらい小気味よく切れあじのある文章が書けたらなあ…。

高校~大学のころ、文庫本を中心に著作をあれこれとあつめていたのですが、
本作もそのひとつです。
ただ、自分で買ったものではありません。

大学生のとき、担当教授の部屋でゼミをしていると、
書棚に山本夏彦『つかぬことを言う』『ダメの人』そして本作があるのが目にはいりました。

74「先生も山本夏彦を読むんですか? 自分もよく読んでいるんです」
教授「ああそうなんだ。よかったらもらっていっていいよ」

借りて読ませてもらおうとかんがえていただけだったのですが、
あっさりと自分のものになってしまいました。
教授はとても面倒見がいいというか、ふところがふかいというか、
定年退官されるときも、蔵書のいくつかをゆずっていただきました。
あまり連絡とってなくてごめんなさい。機会があればお会いしたいです。

奥付は、1991年の第1刷。
おそらくは発売された直後に購入されたのでしょう。
ところどころのことばや文章に、鉛筆で線や丸が書かれていて、
これらが、教授のお気に入りだったとおもわれます。
たとえば…。

(P29)
いま新聞がいけなくなったのは、自分を全き潔白全き正義だと思うようになったからである。
この世にそんなものがあろうか。


(p119)
老人のいない家庭は家庭ではないと言えば老人は喜ぶ。若者はいやな顔をする。
けれども今の老人は老人ではない。迎合して若者の口まねをする。
老人と共にいても若者は得るところがない。追いだされるのはもっともである。


(p187)
この世の中にはアメリカ人でもなければソ連人でもない、
白人でもなければ黒人でもない「当人」というものがいて、
他人の目にはありありと見えることが当人には見えない。


(p211)
獅子でも虎でもあの猫でさえ息づいているだけで美しい。
同じ哺乳類でありながら人間の裸体は見られたものではない。
醜であり陋である。あるいはかざりあるいはかくさなければ見るに耐えない。


(p221)
忌憚なく言えということはほめてくれということだとは、私は自分のことから推して知っている。
そして私はお座なりが言えないたちである。ほめるならほめるだけのものがなければならない。


こういうのを「寸鉄人を刺す」というのでしょうね。
A→B→C→D→Eという手順をおって論をすすめるのでなく、
一気にA→Eへとワープしてしまう。
そのはぶかれた行間がわかる人は「ああなるほど、そういうことね」とうなづき、
「余人にはわかるまいが、オレにはこの意味がわかるぜ」と悦にいる。
読み手をそういう気にさせることも、山本翁のねらいなのでしょう。

自分がいちばん好きな章は、タイトルにもなっている「生きている人と死んだ人」。

(p139)
本を読むということは死んだ人と話をすることで、
私は縁あって明治の本を読んで明治の人ならたいてい知るようになった。


生きている自分が、本をとおして死んだ人と話をする。
このフレーズにいたく感銘をうけて、
そのころ筑摩書房から出ていた「明治の文学」シリーズ全巻を順に買っていき、
あいた時間をつかって、かたっぱしから読みふけっていたものです。

死んだ人と話をする。
先日BSで放映された映画『父と暮せば』(黒木和雄監督)にも通じることです。
原爆で死んだ父の幽霊が、生きのこった娘のもとにあらわれる物語。
原作者・井上ひさし氏の意図としては「娘のもうひとつの人格」だったとおもいますが、
映像として見ると「生者が死者の声をきく」かたちになっていました。

自分ひとりの知識や経験だけではつかめないさまざまなことを、
生きている人のみならず、死んだ人の話をきいて、自分のなかにとりいれる。
このブログをとおして、そういう姿勢をわすれないようにしたいものです。

スポンサーサイト

トラックバック一覧

コメント一覧

コメントの投稿

名前

タイトル

メールアドレス

URL

本文

パスワード

非公開コメント管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。