スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

山岸凉子『日出処の天子〈完全版〉』1巻


日出処の天子 第1巻 完全版 (MFコミックス)日出処の天子 第1巻 完全版 (MFコミックス)
(2011/11/22)
山岸 凉子

商品詳細を見る

おおっ、各話の扉絵がフルカラー!
巻末には予告カットのカラー原稿まで。
そしておおきくなってよみやすい。
文庫版は全巻もっているけど、これはかっておかなきゃ。

ここでほめあげるまでもなく、すでに名作のほまれたかい本作。
蘇我毛人(蝦夷)と厩戸王子(聖徳太子)、ひかれあうふたりのイバラのみち。
ひさびさに再読してみて、これはまさに恋愛マンガだなあと実感しました。
それもドロドロこのうえない、昼ドラもかくやというディープな。

1巻では、ふたりのであい、そして徐々にちかづいていくさまがえがかれます。
皇子にひかれていくじぶんのきもちにとまどう毛人。
毛人にたいしてだけは、親兄弟にもみせないすがおをさらけだす皇子。

まよいこんだ地獄(イメージの世界?)から毛人とともに脱出した王子にたいして。

(p277〜278)
「あの時 溶け合ってしまいましたね」
「憶えているのか」
「はい その時 王子のお心がわたくしを助けようとなさっているのが
 感じられました」


からだがとけあってひとつになる、というのは、もちろんセックスの比喩ですが、
ここでは、たがいの精神がむすびついた、という印象です。
表面にはださない、こころのふかいところでつながったような。
と、ことばにすると、なんと陳腐なことか。

(p281)
だって あの時 王子の身体の一部が わたしの中へ流れ込み
わたしの一部が 王子の中へ残っているような そんな気がするのだもの
わたしの中の王子が なにかいいたげだ……


(p297)
さきほどから感じるこれは…
王子のお心が… 痛んでいるのか?


ことばにださなくても、あいてのきもちがつたわってくる、わがことのように。
ここまでつながりあうふたりですが、その愛の結末は、とても残酷です。
未見のかたのためにネタバレはひかえますが、
正直、最終巻の7巻をみるのが、とてもつらくなります。

とはいえ、すばらしい名言がつぎつぎにでてくるのも7巻ではあります。
ではひとつだけ、王子のセリフを。

(文庫版7巻、p110)
わたしは女が大嫌いなのだ!
か弱さの仮面を被り その下で男に媚を売る女というものが
この世で一番嫌いなのだ!


こ、ここまでいうのか…しかもじぶんの◯◯にむかって…。

ゴールのみえない、つらい結末がまっているのがわかっている愛。
ふと、映画『スカイ・クロラ』制作時の、押井守監督のことばをおもいだしました。
『アニメはいかに夢を見るか』より。

(p46)
不幸になっても構わない、
むしろ不幸になることを含めて人生の価値なんだという、
捨て身の人生を生きる情熱みたいなものを若い人に知ってもらいたかった。

人生を留保することで傷つかないで済むかもしれないけれど、
傷つくことを恐れて生きることはできない。
さらに一歩進んで傷つくことこそが人生なんだ。
それは、破滅することが恋愛の究極である、ということと同じです。
決して恋愛することは人を幸福にしない。
あえて心理状況を追い詰め地獄を見させることが恋愛なんだ…


恋愛の究極は破滅である。
じぶんを、あいてをほろぼしてなお、そのおもいに殉ずる。
そうした選択を毛人がしていたら、どうなっていたのでしょうか。
恋愛マンガとしては最高のゴールですが、歴史はおおきく改変されていたでしょう。

この作品については、文庫版1巻での荒俣宏氏による解説が、
すべてをものがたっています。
ストーリーをはなすかわりに、この解説を引用します。

(文庫版1巻、p318〜319)
宿命ともいえる愛憎関係にとらえられた厩戸と毛人は、
こうして自らの一族を悲劇的な破滅に向かわせる。

そしてわれわれは、この物語の底に、ひとつの仏教用語を透かしみることとなる。
因果応報!
しかもこの因果は、罪から生じるのではなく、愛から生じる。
かくて山岸凉子の聖徳太子にまつわる物語は、
愛が罪と等価であるという、いちばん重い因果律にまで辿りついてしまう。

たしかに、聖徳太子を祟り神として捉えたのは、
80年代の歴史の勝利だったかもしれない。
しかし少女まんがの可能性は、
祟りなどという社会的につくられただけの憎しみを大きく脱して、
愛と罪とが一体化するひとつの地獄浄土に聖徳太子をみちびいてしまった―。


この恋愛地獄絵図、ぜひ完全版でてもとにおいておきたい!
少々ねだんははりますが、イヤ、これは今後もかいますよ、きっと。
文庫未収録だった、ギャグ風味の美麗カット(p179)で、こころをなごませつつ。

スポンサーサイト

トラックバック一覧

コメント一覧

コメントの投稿

名前

タイトル

メールアドレス

URL

本文

パスワード

非公開コメント管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。